カチナ?カチーナ?


カチナ?カチーナ?

ごく最近まで日本国内の書籍や出版物に於いて『カチナ』と表記されていましたが、ここ数年の間になぜか『カチーナ』表記が増えてきました。『カチーナ』表記は本来の意味合いを知らない人(翻訳者?)がアメリカ人の「kachina」の発音をそのままカタカナに置き換えてしまったことが原因だと思われます。1900年代初頭からホピ族に関する書籍が出版されるようになり、それ以降カチナを表す表記は幾つも存在していましたが、その中で「kachina」が一般的に定着しました。これはおそらくは奇人が一番発音し易く親しみやすかったからではないかと思われます。そして「カチーナ」という発音が定着してしまいました。ホピ族は正しい発音に近い「katsina」という表記を使います。発音は「カッツイナ」もしくは「クッツィナ」といった感じです。ホピ族が執筆した書籍でも「kachina」と表記しているものも多くありますが、これは販売するという目的の為の外向きの表現であり、ホピ族の中では「kachina」といった表記は使いません。現在のホピ族にとって「kachina」(カチーナ)はナバホ族等が作った偽物のカチーナ人形を指す言葉でホピ族の本物のカチナを指す言葉は「katsina」(カッツイナ)となります。そもそも白人が「カチーナ」と発音してしまったことが問題の始まりだと思いますが、それを正さなかったホピにも問題があります。当店ではホピ族のカチナドールは「katsina」と表記し、ナバホのものは「kachina」と表記しています。また、カタカナ表記では本当の発音に近い「カチナ」を使用しています。

本物と偽物

シルバージュエリーに関しては本物と偽物の定義は簡単です。ネイティブアメリカンが制作した物が「本物」、東南アジアやメキシコで制作された模造品が「偽物」となります。細かいことを言えばナバホ族がホピ族のデザインを模倣して作った物もホピ族にとっては「偽物」になります。カチナドールに関しての定義はこれとは大きく異なります。カチナドールの場合はカチナ信仰のある部族が作った物は「本物」、信仰のない部族が作った物は「偽物」となります。具体的にはホピ族やズニ族などのプエブロ系部族は同様の宗教を持ちカチナ(実際には部族によって呼び名は変わります)信仰があるのでこれらの部族が作る物は「本物」となり、近隣のナバホ族など非プエブロ系部族はカチナ信仰がなく、これらのものは「偽物」となります。ラスベガスやサンタフェ、セドナなど有名観光地で安価に販売されているものは全て偽物と考えて差し支えありません。これらの偽物の中ではナバホ族が作った物はかなりまともでカチナの特徴を良く捉えています。ホピ族とは地理的に近いのでカチナを良く観察しているようです。そもそもカチナやカチナドールを世間知らしめたのはナバホ族が安価に大量生産し観光地や道端で販売したからであり、この事実は評価すべきことで一方的に悪者扱いすべきではないのかもしれません。一方、その他の非プエブロ系部族が作った物は最早カチナドールと呼べる代物ではなくカチナの特徴を一切見いだすことが出来ない単なる変な柄の木の人形になっています。これはナバホ族がホピ族のカチナを模倣したのに対し、その他の部族はナバホ族のカチナドールの作り方のみを模倣したためカチナの特徴が消失してしまったものと思われます。つまり、そもそもこれらはカチナドールではないのかもしれません。